大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和32年(あ)918号 決定 1960年2月03日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人白井俊介の上告趣意第一点は、憲法違反をいうけれども、実質は、一審判決後被害の賠償に努力したにかかわらず控訴を棄却した原判決の量刑は不当であるというに帰し、〔憲法三七条一項にいう公平な裁判所の裁判というのは、組織、構成等において不公平のおそれのない裁判所の裁判ということである。(昭和二二年(れ)第二九〇号同二三年六月三〇日大法廷判決、集二巻七号七七三頁参照)〕同第二点は、量刑不当の主張であって、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。

弁護人新家猛、同土川修三、同坂野滋の上告趣意第一点は、原判決の違憲をいうけれども原審において主張せられず従ってその判断を経ない事項であって刑訴四〇五条の上告理由に当らない。〔賍物性の知情のごとき犯罪の主観的要件に属するものについての直接の証拠は、公判廷外の被告人の自白だけであっても、その客観的構成要件たる事実について他に確証があり、右被告人の自白の真実性が保証せられると認められる以上、それ等の各証拠を綜合して犯罪事実の全体を認定することは適法である。(昭和二四年(れ)第八二九号、同二五年一一月二九日大法廷判決、集四巻一一号二四〇二頁参照)〕

同第二点は単なる訴訟法違反の主張であり、〔本件のように、原本に代えて証拠書類の謄本の取調請求があった場合、被告人および弁護人がこれを証拠とすることに同意し、且つ証拠調をすることに異議がない以上、謄本を証拠とするため証拠調をしても違法でないことは、当裁判所の判例の趣旨とするところである。(昭和二五年(あ)第五四七号、同二八年一二月一七日第一小法廷決定、集七巻一二号二五五八頁参照)〕同第三点は量刑不当の主張であって、いずれも刑訴四〇五条の上告理由に当らない。また記録を調べても同四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田 克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例